女性部下にどう注意していいか分からない管理職へ|伝わる注意の仕方
「注意は一方通行、一緒に考えるのは双方向」
——女性部下にどう注意していいか分からない管理職へ
「ハラスメントだと言われると困るので、気になることがあっても、指導や注意することを躊躇してしまうことがある」
そう感じている管理職は、いま63.3%にのぼります。
(21世紀職業財団「DEI推進状況調査」2024年・11業種・従業員101人以上企業の男女正社員・うち男性管理職500名)
実に、4人のうち3人近くが、注意や指導をためらっているのです。
これは、けっして他人事ではありません。
私自身が、まさにそうでした。
そして、注意できなかったことで、一人の部下を辞めさせてしまった経験があります。
今日は、その失敗と、そこから私がたどり着いた「注意の仕方」についてお話しします。
目次
注意できず、一人のパートさんを辞めさせてしまった
私が前職の惣菜チェーンに転職し、店長になったばかりの頃のことです。
前任の店長が採用した、40歳くらいのパートさんがいました。
少しおとなしくて、人と接するのが得意とは言えない方でした。
物覚えもゆっくりで、少し不器用な方でした。
仕事はレジ専任。でも、そのレジでミスが多かったのです。
他のスタッフからは「店長、あの人どうにかしてください」と何度も言われました。
レジは、お客様が最後に接する場所です。
どんなにいい商品をそろえても、レジの印象が悪ければ、すべてが台無しになります。
だから、愛想よく、感じよく、正確に。
そのパートさんにそう伝えたかったのです。
でも、私は言えませんでした。
正直に言うと、どうすればこの人が良くなるのか、私自身が分からなかったのです。
良くする方法が分からないから、何と言えばいいのかも分かりませんでした。
ベテランスタッフがその人を注意している姿を見て、「任せておけばいいか」と逃げてしまいました。
それに、注意されている姿が、少しかわいそうにも見えたのです。
変わらないまま、その人は辞めていきました
このままではいけないと思い、あるとき本人と話しました。
「どうすればうまくできるか」を一緒に考え、改善の目標も立てました。
でも、状況は変わりませんでした。
進歩が見えないまま、周りのスタッフからは「店長、あの人もう難しいですよ」という声まで上がるようになりました。
私は、もう一度その人と話しました。
それでも、変わりませんでした。
そして最終的に、その人は辞めていきました。
できれば続けてほしかったです。
しかし、引き止める力も、変えてあげる力も、私にはありませんでした。
ただ、現状をどうすることもできないまま、その人が辞めていくのを見ていることしかできなかったのです。
その人と最後に話したときの光景を、私は今でも覚えています。
本当は、もっとできることがあったはずだ
その人ができるようになるために、もっと何かできたのではないか。
その人のいいところを、もっと見つけられたのではないか。
結局、私は指導や育成から逃げていたのではないか。
今でも、そう思います。
そのパートさんは、私が採用した人ではありませんでした。
前任の店長が採用した人です。
それでも、いえ、だからこそ、自分が向き合いきれなかったことを悔やんでいます。
私は、人を採用するとき、面接でその人の話をよく聞きます。
人にはそれぞれ、働く理由があります。
その理由を聞けば情も移りますし、なんとかしてあげたいと思うのです。
それに、私自身も最初は失敗だらけでした。
それでも周りの人が教えてくれて、少しずつできるようになりました。
「自分ができるようになったのだから、この人だってできるはずだ」
本当は、そう信じたかったのです。
注意の仕方を変えたら、相手が変わった
その後、複数の店舗で店長を務めましたが、同じようなことが何度も起きました。
そのたびに、辛い思いをしました。
でも、このままでは何も変わりません。
お互いが嫌な思いをするだけです。
そう思って、私は新人の指導の仕方を根本から変えました。
「どんな人も、最初からはできない。どんな人も、必ずできるようになる」
そう思うようにしたのです。
具体的には、注意するときに、こんな順番に変えました。
① まず、自分が感じたことを伝えます。
② それについて、本人がどう思うかを聞きます。
③ これからどうすればいいかを問いかけ、本人から言ってもらいます。
たとえば、レジ袋への商品の入れ方が雑だった人には、こう声をかけます。
「さっき見ていたんですが、レジ袋への入れ方が少し気になりました。あれだと、お客様が持ち帰るときに商品が傾いて困ると思うんです。もし◯◯さんがお客様だったら、どう感じると思いますか?
このままだとまたクレームになるかもしれませんし、◯◯さん自身も困ると思うので、私も心配なんです。これについて、どう思いますか?
これから、どうすればいいと思いますか?」
少し長いですが、これが「気づかせる」注意の仕方です。
以前の私は、できていないこと、ダメなことだけを指摘していました。
すると相手は、落ち込んで萎縮するか、反発するかのどちらかでした。
それでは直りません。
でも、問いかける形に変えたら、逆に相手のモチベーションが上がったのです。
問いかけられたことで、本人の頭の中に「うまくいくイメージ」が浮かびます。
そのイメージを実現しようと動くから、楽しくなって、できるようになっていくのです。
注意されっぱなしだと、マイナスの状態で終わります。
失敗のイメージがついて、萎縮して、余計にできなくなります。
注意や指導で大事なのは、相手をマイナスにすることではなく、プラスにすることだ。
そう気づきました。
注意は一方通行、一緒に考えるのは双方向
注意するのは、難しいことです。
注意したら、相手ができるようになる、そんな簡単なものでもありません。
それに、注意が苦手な人なら、「注意しなきゃ」と思うだけでストレスになります。
それではお互い、うまくいくはずがありません。
私がこれまでの経験を通してたどり着いた答えは、シンプルです。
それは、「一緒に考えてあげること」です。
なぜうまくできないのか。
なぜ失敗するのか。
どうすればできるようになるのか。
それを、一緒に考えるのです。
注意は一方通行ですが、一緒に考えるのは双方向です。
この違いが、すべてだと思っています。
それでも、どうしても注意しなければいけない場面はあります。
そんなときは、最初にこう言うといいのです。
「一つ気になったことがあるので、伝えていいですか?」
たったこれだけで、相手に受け入れる姿勢ができます。
これだけでも、かなり違います。
あのとき辞めていったパートさんに、私はもう何もしてあげられません。
でも、あの後悔があるからこそ、今こうして同じ悩みを持つ管理職の方に伝えたいのです。
注意できないのは、あなたが冷たいからでも、管理職としての能力がないからでもありません。
ただ、「どう伝えればいいか」を知らないだけです。
そして、それは必ず身につけられます。
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