戦略・戦術・作戦・即戦力・・・ビジネスに出てくる”戦”
ビジネスの現場では マーケティング戦略、人事戦略などという言葉が頻繁に使われます。
戦略とは、平たく言えば方向性・シナリオです。そして、その方向性・シナリオに対し、どう進めていくかとなる作戦を立てます。
作戦とは、計画を達成するためのプロジェクト的なものです。
さらに、そのプロジェクトをどのように進めていくかが戦術です。より具体的な方法です。
例えば、売上を今期は昨対150%を達成する という戦略を掲げたとします。
売上150%を達成するためには、いろいろなことをしなければいけませんし、各人がバラバラに動いてもいけません。150%を達成するためにすることを大きく5つ挙げたとして、その5つを行うべく作戦=各プロジェクトが立ち上がります。そして、各プロジェクトはどのように進めていくか具体的な方法=戦術を考えて実行します。
「具体的方法を実行する上で人が足りないから採用するか。しかし、重要な急ぎの案件だから即戦力となる人を採用しなければ。」
実行する上で、人員が足りなければ優秀な即戦力が必要ですね。
ざっくり、このような流れでしょうか。
しかし、なぜビジネスの現場で ”戦” という文字がつく言葉が行き交うのでしょうか?
みなさん、不思議に思いませんか?
戦略・戦術・作戦・即戦力・・・ビジネスに出てくる”戦”
”戦” がつく言葉は、いまやどの分野でも使われています。
本当の戦いがあるスポーツの世界はもちろんのこと、政治やビジネスの世界で使われるのは当たり前です。
みなさんご察しの通り、これらの言葉は軍事用語です。
18世紀末頃から使われるようになり、19世紀に入ると、戦略論なるものが登場し、この理論が今でも元になっているようです。
そして、政治と軍事は切っても切り離せない関係ですので、政治の世界で使われるようになった言葉が、今日ではビジネスの世界でも使われるようになったようです。
しかし、なぜ、この言葉を使うのでしょうか
一体、ビジネスしている人は何と戦おうとしているんでしょうか?
一体、誰を向いてビジネスしているのでしょうか
過日、ある有名な経済番組を観ていました。そこに登場したのは、今、アパレルで急激に伸びてきた企業W。元々作業着など現場系の方々向けのお店でしたが、今はその品質がすばらしい、しかも安いということで一般向けにも多数のラインナップをして売上も店舗数もすごく伸びている企業です。国内の店舗数だけですと、あの超有名な某アパレル企業F(店舗名U)を抜いています。
その企業Wはあることに躍起になっていました。
某エリアに日本初出店の超大型スポーツショップがくる
企業Wの商品は、品質の良さからスポーツウェアとして着回している人が多く、また、そのスポーツショップがくるエリア周辺にはWの店舗が多数あります。ということは、スポーツショップがくると、Wのお客様が全部そっちに流れてしまい、売上が下がるのではないか・・・。
そう危惧したWは、そのスポーツショップにない新商品開発を行い、また、新店舗をオープンさせ、スポーツショップの包囲網を築きました。
結果は、Wの新商品も新店舗も大繁盛し、あー、めでたし、めでたしというエンディングになりました。
当然、スポーツショップもたくさんのお客様で溢れかえっていましたが。
企業Wに国内店舗数で抜かれている企業Fの会長。一代で築き上げ、その経営手法はかなり高く評価されています。
以前のインタビューでこのようなことを言われていました。
やるからには世界一を目指さないと意味がない
この世界一とは、アパレル業界での売上世界一という意味です。
私には全く理解できません。超凡人なので当たり前ですが。
先ほどの企業W、このアパレル企業F は、一体どこを向いているのでしょうか?
国内のたくさんの企業も軍事用語を社内で使い、シェア拡大を一生懸命しています。
私は本当に思うんです。
どこ向いてるの?って。誰と戦うの?って。なんで戦う必要があるの?って。
本当にお客様を向いてビジネスをしていれば ”戦” という言葉なんて出ないです。
店舗や商社の営業など、お客様と直で接する方はそんな言葉使ってません。
なぜなら、必要ないから。お客様を向いて戦おうなんて思ってないから。
私はそこにものすごい違和感を感じています。
ビジネスの目的は世の中を幸せにすること
現在日本の企業数は421万社です。このうち、中小企業は419万社で99.7%です。
中小企業の定義は業種により違いますので、身近にある大きいと思っている会社も実は定義上は中小企業だったりします。
これらの企業の目的は全社共通です。それは、「世の中を幸せにすること」。
自社が作り出す製品・商品・サービスで、世の中の人の役に立ち、結果、その方々が喜んでくれ、幸せになることが全企業の目的です。
日本は世界でもトップクラスで裕福な国です。日本で実現できないものなどないのではないでしょうか。
そんな日本に、大きな大きな問題があります。それは、世界でトップクラスの少子高齢化。人口減と高齢化が加速しています。こんな中でもビジネスを発展させないといけないということで、各社はいろいろなことを考えて実行しています。しかし、自社のことを重んじるあまり、大事なことを忘れている気がしてなりません。
田舎に住んでいるから余計に感じるのかもしれませんが、田舎には大手企業がどんどん参入してきています。
特に、チェーン店は凄まじい勢いです。そりゃあそうです。売上を伸ばすためには出店しかありませんから。
出店すれば、その地域の雇用が潤います。しかし、それは幻想で、余計に人手不足が加速しています。
人口が限られている地域に新しく働く場所ができても、働く人を分散させるだけで、各所は確実に減っています。
また、その地域で商売をされてた店舗は閉店を余儀なくされるケースも増えています。
なぜ、大手チェーン店は田舎に進出してくるのでしょうか?
自社のことしか考えていないからではないでしょうか。
社内会議などで軍事用語を使わなくなれば、もっと違う見方・考え方ができるのかもしれません。
この意識・考えが変わらない限り、日本は本当の裕福な国、幸せな国にならない気がします。
甘いことを言っているのかもしれませんが、思いやりの心をもってビジネスをすれば、もっと豊かな国になっていたでしょう。これからだって遅くありませんん。
売上が世界一になっても、そこで働いている人たち、関係する方々が不幸だと全く意味がありません。
「おかげさま」の気持ちで、本当の意味で幸せになる、豊かになるビジネスの現場になることを祈りたいです。
感情をほんのちょっと変えるだけで、見方も考え方も大きく変わりますよ。