勝って兜の緒を締めよ
「勝ったからこそ、やり直さなければいけない。今日、強く感じました。」
昨日、世界柔道73kg級で金メダルを獲った大野将平選手は、金メダル獲得後のインタビューでこのように答えていました。
大野選手は昨日の6試合を全て1本勝ち。私はテレビで観ていましたが、テレビでも伝わる畳の上に上がった存在感とオーラは、実際に正面に立った相手選手は脅威でしかなかったでしょう。
豪快に勝った後も表情を全く崩しません。勝った後は喜びを爆発させても良いのでしょうが、大野選手は試合前よりも顔が引き締まっているように見えました。
だからこその冒頭のインタビューの言葉なんでしょうね。
圧倒的強さで勝ってしまうと、ついつい自分はすごいんだと思ってしまうことがあります。
周りの期待通り、いや、期待以上の活躍をすると、例えば、野球でチャンスに回ってきたらいつもヒットやホームランを打つ、サッカーで必ずチャンスでゴールを決める、仕事でいつもいい成果を上げるなど、周りからもすごいと言われ、また、自分でもやはり「俺はすごい!」と思ってしまうことがあります。
いわゆる「調子にのる」ってやつです。私もいっぱい調子にのってましたー。
すると、気が緩んでしまい、油断が生じます。練習しなくても大丈夫とか、次の相手は格下だから大丈夫とか、今まで何回もしたことがある仕事だから大丈夫だとか。
このように思っていると、必ず大きな失敗やミスをしてしまいます。
チャンスどころか全打席で凡退とか、格下に余裕で負けるとか、何回もしたことある仕事だからとよく確認をしていなかったら大事なことを見逃していたとか。
このような気の緩みや油断をメンタルスペースといいます。
一旦メンタルスペースを生んでしまい、失敗やミスをしてしまうと、緊張や焦りや不安から立て直せないことが往々にして起こります。
「勝って兜の緒を締めよ」
昔から言われていますね。大野選手もまさにこの心境です。圧倒的な強さで勝って、同階級ではもはや敵がいない状態です。それでも、「やり直さなければならない」と言ったのは、大野選手が目指す柔道ができなかったからであり、まだまだ力が足りないと思ったからです。
私たちも調子が良いときこそ、もっとできた部分や足りなかった部分を探し、改善することが大事ですね。
大野選手はリオデジャネイロオリンピックで金メダルを獲りました。当然、周りの期待も大きく、世界柔道も勝って当たり前で、どんな勝ち方をするのかが注目されていました。
「なんやかんや言っても大野が勝つだろう、という周りの声こそが一番の敵だと思っていた」
期待されることはもちろん嬉しいと思いますが、周りの期待が大きければ大きいほど、「勝った気」になってしまうことがあります。自分を鍛えることで、その敵も見事に倒してしまいました。
自分自身にも、周りの声にも浮つかない、このメンタルこそが大野選手の強さですね。
まさに最強です。
東京オリンピックまでにどれだけ強くなるか楽しみですね。